若者の街、東京・渋谷から電車で十五分のところにある駒澤大学高等学校(河村光司校長)は、コンピュータ操作能力が将来、どんな分野でも求められるだろうと平成七年、同校の創立五十周年を機にコンピュータ教育の充実を目指し、第二情報処理室を新設、五十台の端末を新たに導入した。
これらは常時インターネットの接続が可能で、この部屋は昼休みや放課後は自由に出入りできるようになっている。
また、被服室や美術室、職員室などに日本ビクター(株)の無線LANを設置しており、ここではノートパソコンを中心に、ケーブル配線の心配がなくインターネット接続ができる。
こうしたインターネットの設備が整っていることもあり、同校では入学してきた生徒全員にメールアドレスを配布している。一年生の一学期には家庭科の時間を使い、週に一回ずつワープロの打ち方やメールの送り方を学び、二・三学期には、やはり週に一回ずつ、今度は総合理科の時間を使い、ホームページ形式で課題学習をまとめていく体験をさせている。
二年生になると、土曜日に特別講座の時間が設けられており、ここでコンピュータを選択すると、インターネットの情報発信やパワーポイントの操作、フリーのソフト(例えば作曲など)づくり、画像の処理などについて学ぶことができる。
三年生では特別に講座は設けてないが、同校生徒の多くが駒澤大学に進学することから、「入学前にはコンピュータの操作を習得しておいてほしい」との大学側の要望に応えるように、情報機器の勉強に力を注ぐ。
従って最も多く利用するのは一年時だが、これは一学期の家庭科で基礎を学んだ頃、夏休みの課題として総合理科から宿題が出され、これを各自がホームページ形式でしていかなければいけないので、授業時間だけでは時間が足りず、昼休みや放課後にやっている姿が多く目につく。
第二情報処理室には、教諭八人が交代で常時誰かがいるようになっており、生徒は利用用紙に記入すればコンピュータを自由に使っていい。利用法についても授業のために使うもよし、ほかのことに使ってもよしということで、メールを交換したり、ゲームをしたり、チャットをしたりと、生徒たちの利用法は様々。
もちろん教育上見てほしくない情報もインターネットでは引き出すことができるが、山海俊範教諭は、「みんながのぞき込める状況の中で、そんな妙なものを見ようという生徒はいないし、初めにネチケットのことは言ってあるので、ここでは情報のガードといったことはしていない」と生徒を信頼している。
使う頻度が多い生徒の中には、一分間に三百字を打ち込めるようになった生徒もおり、こうした教師が驚く状況も多々あるようだ。「環境を与えてあげれば、子供たちは習得するのが早いし、素晴らしい能力を持っている」。
教師たちもはじめは徐々にだったが、職員室に無線LANがつながったこともあり、今では個人でパソコンを持っている教師も多く、半数以上がマスターしているという。
同校にはカナダへの短期留学制度がある。そうした打ち合わせもすべてメールで行うため、「外国の学校とのつき合いにはメールなしでは対応できない」とも。
山海教諭は、「教員も生徒も楽しく新しい世界に向かっていくのがインターネットの世界」とし、「教え込むのではなく、心をくすぐってやらせることがベスト」だと、自主的な取り組みを促している。